植物が教えてくれること

自然により興味が湧き、畑仕事に一層のめり込むきっかけになった一冊の本があります。それは「土と内蔵(デイビッド・モントゴメリー著)」という、一風変わったタイトルの本です。

植物はどのように土から栄養を得ているか?「植物が根っこを伸ばして、土の中にある養分を吸収している。」そう答える人がほとんどではないでしょうか。私もその一人。根が届く範囲に栄養となるミネラルがなければ、一巻の終わり。植物が根を張る“自助努力”と、自分の周りにミネラルがあるかどうかの“運”で育つ。だから人は、植物の根元に肥料を播くのだと。

しかし、土の中の世界はそれほど単純ではなく、また、植物はけっして孤立無援で生きているわけではありませんでした。

実は植物、栄養となる腐食(腐った有機物)を根から直接吸収することができません。ではどうやって栄養を得ているのか?土の中にいる微生物たちに助けてもらっているんです。植物は自ら光合成で産み出した糖分を、根から微生物に分け与えます。なんとその量たるや3〜4割にも達するといいますから、とても気前が良い(笑)。ご馳走をもらった微生物はそのお返しにと、植物が土中から栄養分を集めて、植物が吸収できるかたちに変えて植物にせっせと運ぶのです。微生物はネットワークを張り巡らして、植物の根が届かないような遠くにあるミネラルも運んであげます。

微生物は、ただ栄養を運ぶだけではありません。悪い細菌やウィルスから植物を守る、ボディーガードの役目もします。植物が害虫に食べられたら虫が嫌がる忌避物質を植物に与えたり、病気にかかったらその薬を与えたりもします。そうやって、植物と微生物は互いに助け合い、共生しているのです。

畑の土を1gほど取れば、そこには100万種に迫る多様な土壌微生物が、20億は住んでいると言われています。スプーン1杯の土の中には、全世界の人類の数以上の微生物がいます。植物は孤立無援どころではなく、多くの仲間と共に生きている。この本は、そう教えてくれました。

小学校の理科の時間に、自然界は“弱肉強食”だと教わりました。「競争が進化を促す」と。しかし近年、分子生物学など様々な分野で、“競争”ではなく「共生(協力)が生命の歴史の原動力」と捉える動きが広がりつつあります。もし、自然の摂理が共存共栄だとしたら、人間社会も共存共栄があるべき姿なのでは?私の中で、重要な気づきの瞬間でした。

私が尊敬してやまない、二宮金次郎の言葉にもあります。「何を人道というのか。互に生き、互に養い、互に救い、互に助けることがそれである。

余談。
人が肥料(栄養)をたくさん与えると、植物はどうなるか?満たされるとケチになるのか(笑)、植物は微生物に糖分を分け与えなくなるんです。当然、微生物も助けてはくれません。その行く末は、栄養が偏り(微生物からもらう栄養ほど肥料は万能ではない)、病気にも弱くなり(微生物が薬を与えたり守ってくれなくなる)、身なりは大きいけれども、とても貧弱な植物に育ちます。植物は、いろいろな教訓を与えてくれます。